ユナイテッドモンモンサン 「脱。」

脱。

脱。


また去年に話を戻しますけども。


大阪にエニクスパルプンテというバンドがいまして。一昨年くらいにその存在を知り、たまたまライブを見る機会があったのですが、何処となく Weezer 辺りに通じるキュートで力強く痛快なポップネス、加えて演奏のはっちゃけた勢いとメンバーの愉快なキャラクター、それらが見事に合致したパフォーマンスに一発で撃ち抜かれてしまいました。その後も何度かライブに足を運び、親しみやすく人を選ばずに楽しめるその魅力にどんどん引き寄せられていきました。某音楽コンテストのグランプリを決める公開ライブも見に行ったのですが、他のバンドよりも確実に頭一つ抜けたパワフルさがあったし、ステージングに華があった (そして予想通りグランプリを見事獲得) 。


それからしばらく時間が経ち、何処ぞの企業から圧力がかかったのか (笑) バンド名を変更して初の全国流通となる今回の音源。以前に自主制作で発表していた楽曲の再録も含む全6曲。ポップスの正義、あるいは魔法といった謳い文句を見かけることはしばしばありますが、それはこの作品にこそ似合うであろうと俺は確信します。全国に向けて発信するために改めてきっちり清書された今回の内容は、ライブを体験した後の身にしてみれば幾分かアクが抜けて洗練された印象があり、それは良くも悪くもといったところではありますが、その辺を差し引いてもここにあるのは正義だし、魔法だと思います。


キッチュなシンセを塗しながら空高く突き抜けるようなメロディが気持ち良いオープナー 「君だけのキス」 、女性らしい等身大の感情がやはりオープンに発散される 「正真正銘女子のうた」 、間違いなくライブ映えするであろう賑やかなパーティーチューン 「きみはぼくさー」 など、底抜けにキャッチーでエモーショナル、なおかつ一撮みの切なさがスパイスとなって胸を打つ楽曲群。メインソングライターの松岡恭子はその華奢な身体から想像もつかないほどハイテンションで豊かな感情の波を放出する、その奔放で濃ゆいキャラクターがバンド全体にそのまま反映されています。アルバムタイトルの 「脱」 は今自分が居る場所から脱け出すアクティブさであり、虚飾を脱ぎ捨てて生身を曝け出す勇気であり、何物にも縛られずにいたいという姿勢が表れているのかなと。そのまま何か一つのきっかけで小さなライブハウスさえ脱け出し、ブレイクスルーしてしまうのもそう遠くないはずと俺は勝手な期待を寄せています。


大阪出身の4人組による初リリース作品。


Rating: 8.3/10