cali≠gari 「11」

11(初回限定盤)(DVD付)

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消費期限とは何だったのか?


さすがに再結成ブームも一段落してきた頃じゃないかなと思いますが、現役の頃を考えると幾ばくか寂しさを感じる活動だったりするバンドが多い中、彼らは再結成組の中でもセールス/クリエイティヴィティ共に現役を上回るほどの活躍を見せていて、色んな意味でしたたかなバンドだなあとつくづく思います。 「10」 「≠」 と作品を重ねるごとに各メンバーの個性が絶妙なバランスを保ちながら高いレベルに押し上げられ、今作ではさらにエッジィに研ぎ澄まされた骨太なアンサンブルへと進化。ギターのアグレッシブな厚みも強化され、捻じれながらもスタイリッシュな現在進行形のカリガリを力強くアピールしています。


秀仁曲は相変わらずの鉄板。先行シングル 「娑婆乱打」 「暗中浪漫」 は再始動後の彼らの王道と言えるグラマラスなニューウェーブポップ、 「吐イテ棄テロ」 「JAP ザ リパー」 は一層刺々しさを増したソリッドなロックンロールナンバー、また前作の 「混沌の猿」 に続く暴れ猿曲 「アイアイ」 も挑発的な遊び心が激辛スパイスとなって効く効く。対する青曲は今回 (カリガリとして) かなり冒険してきました。青節炸裂の直球青春ポップロック 「初恋中毒」 、ノスタルジックな郷愁が心地良い疾走感の中で切なく舞う 「最後の宿題」 、思うさま AOR と化した激渋メロウなアレンジで 「現在」 の肯定を歌う 「東京、40時29分59秒」 と、彼の内面深くに濃い血として流れているであろうメロディ感覚、あるいはリアリティを感じる歌詞を躊躇なくおっぴろげた 「良い曲」 で勝負。


特に 「初恋中毒」 。以前の 「君と僕」 とかもそうだったけど、単純に曲としては良いけどカリガリとしてはコレどうなんだ?という感じで、正直シングルで聴いた時点では結構不安だったりしました。秀仁氏のニューウェーブ曲と青氏のエモ曲、その方向性の乖離がまた始まって、作品全体としては迷走とも言える不穏なムードのあった 「8」 の再来では…と思ったけど、本チャン聴いてみるとあれーなんだか意外にしっくりハマってるのですよね。これって秀仁氏が全曲ちゃんとリードヴォーカル執ってるのが要因なのかな。以前の彼なら 「初恋中毒」 のような歌詞なんて絶対歌わなかったはず。なんせ 「アイはユーにラヴしたんです。」 ですからね。時間の流れの中で懐が深くなったというか、角が取れたというか (笑) 。


前作は秀仁氏が制作においてイニシアティブを取っていたらしいですが、今回は青氏のカラーも再び色濃く現れて、そういった意味でカリガリらしさの濃度が高まったと言える作品だと思います。踏襲があり、実験があり、キテレツな遊びがあり、痺れるような格好良さがある。昔から好きなバンドが形を変えながらもこうやってフレッシュな新作を届けてくれるのって、とても素敵なことですよね。


フルレンスとしては2年5ヶ月ぶりとなる復活後の2作目。


Rating: 7.9/10