PLASTICZOOMS 「STARBOW」

STARBOW

STARBOW


そろそろ今年の新譜について書きますね。


世界各国でぽつぽつと芽を出しているゴシック/ポジティブ・パンク新世代。その筆頭である英国の The Horrors がアルバム毎に作風をシフトしているのに呼応するように、このバンドもゴシックに足場を置きつつ、典型的なイメージに囚われず様々なチャレンジを試みてゴシックの定義を拡張しようとしています。


前作 「CHARM」 がポストパンクとクラブサウンドを融合させつつ、徹底して緊張感のあるダークネスを貫いていたのに対し、今作は曲調のバラエティがグッと広がり、実に色彩豊かな内容になっています。 「SHOOTING STAR」 や 「CRY. DISTANCE.」 では水平線を染める遠い光のようなロマンチシズム、感傷的なポップネスが疾走感の中で滲み出た新機軸。昨年のシングル3部作の時点でも明るさのあるポップ要素は表れていましたが、今回それを本腰入れて突き詰めた結果、ネクストステップの代表曲としてアルバム中の重要な位置を占めています。またファンタジックであどけない印象を残す 「WOOD UNDER THE MOON IN THE LOOP」 や、キッチュな遊び心のある 「CAT」 はちょうどポップスター期の The Cure を彷彿とさせたり。


その一方で 「KMKZ」 「SAVAGE」 といった従来の流れを汲むアグレッシブなナンバーも兼備。特に 「KMKZ」 なんてそんなにヴィジュアルロックしてしまって良いのか?というソリッドな疾走感とバタバタした手数の多さなんですが、彼らが演ると通常のV系とはまた一風違った、ベタなポップに寄りすぎない低熱の刺々しさがあって格好良い。この光と影のごとくベクトルが相反する楽曲群は聴き手を翻弄するものでありつつ、いずれも彼らの強い美意識を感じさせるもの。ポップ/ライトとダーク/ヘヴィ、どちらにも微妙な質感の違いが多くありますが、彼らはそれらのうち自らの感性にフィットするものを審美眼で選別し、無理なくレンジを広げることに成功しています。思えばゴスのオリジネイターである The Cure 、 Siouxsie and the Banshees 、また Love and Rockets へと発展した Bauhaus などもそうでしたが、開花する前の棘ばかりが目立つ状態から蕾が膨らみ、鮮やかな華を咲かせるまでの過程をこのバンドも辿っているということでしょうか。血は争えない。


しかしながら、曲調の幅広さに反して不思議と統一感がある点に関しては、中心人物 Sho Arakawa のヴォーカルのテンションがほとんど一定に絞られているというのが要因の一つかもしれません。冷たいナイフを突き刺すように低く囁き、気怠そうにメロディをなぞり、時には声を荒げて叫ぶ。激しい曲でもポップな曲でも、何処か遠くを見るような冷めた目線で、楽曲にスタイリッシュな印象を与える。曲調に左右されないモノトーンの歌声は、やはり彼らがゴスカルチャーに身を置く故のクールな美意識。


楽曲、映像、写真、服飾と活動を展開する5人組の、2年半ぶりとなる2作目。


Rating: 8.4/10