matryoshka 「Laideronnette」

Laideronnette

Laideronnette


ブリリアンスに敬礼!


荘厳かつ流麗なストリングス、水面を打つ雫のように響き渡るピアノの音色。それらがこの上なく清らかな聖性に満ちた音世界を構築しています。今にも消え入りそうなくらいにか細い女性ヴォーカルは上品なポップネスを添えて、作品の敷居を程良く低くする役割。折り重なるデジタルエディットはこの世界が決して綺麗なものばかりではないことを示唆し、音全体に奥行きを与えています。それらが宙に舞う星屑のように鮮やかな彩りを見せては、ひとつの塊となって洪水のように押し寄せる。ある意味日本人らしい幻想的美意識に貫かれたポストクラシカルのお手本のような作品。


前作 「zatracenie」 に比較するとベタなポップさは幾分か後退したぶんアンビエント要素が増して、聴き手にとってのイマジナティブな余白が生まれているかもしれません。 「Cut All Trees」 なんかは曲名も相まって何かしら明確なメッセージがあるような気もする。絢爛さがあざとさや押しつけがましさに転じないように、自らのインナーワールドを繊細かつ雄弁に表現しています。ただ正直 Sigur Ros 辺りが提示してる世界観とほとんど変わらないし、ありふれた手法ではあると思います。この手の音楽を聴くたびに感じるのは、こういったドリーミーなエレクトロ/ポストロックにおいて決定的な指標と成り得る完成度を提示したのも、それを自ら破壊してその先の世界を見せたのも、俺が知る限りでは今作のレーベル主催者ぐらいなのだなと。もちろん一般リスナーの狭い知識なのでコレはどうだと言うのがあったら教えていただければ幸い。


5年半ぶりとなるフルレンス2作目。


Rating: 6.7/10