Crystal Castles 「III」

III

III


そしてなお夜の淵に佇む。


荒削りな野心と遊び心に満ちていた 1st からポップスとしての洗練と纏まりを見せた 2nd 、それらを経て辿りついた今作。テクスチャーを折り重ねて生まれるサウンドの深淵は一層深くなり、バンドが以前より持ち合わせていたゴス/ウィッチ・ハウスの側面をよりクローズアップした内容になってると思います。極端な音響処理で輪郭の滲んだヴォーカル、心音のようなリズムと肺を冒す濃霧のようなシンセサウンド。そういった各要素がシューゲイザーに通じる手法で混じり合い、サバトにも似た瘴気で緊張の糸をビシッと張りながら、ポップスとしてのキャッチーな軽みも同時に持ち合わせてるという。


「Plague」 「Kelosene」 はダブステップのシャープな流線美、 「Wrath of God」 「Sad Eyes」 などはレイブやユーロビートのエッジィなアグレッション、刹那的で狂おしい熱量を感じさせるもの。その中でヴォーカルの Alice 嬢はライブでの暴れっぷりとは裏腹に、蠱惑的なウィスパーヴォイスの方が多用されており、スモーキーなサウンドと相まって夢魔のような不可思議でスリリングな魅力を放っています。ふと気になって歌詞を調べてみましたよ。オフィシャルに全部載ってたので転載 (そしてジャンピング土下座の準備)。


I'll protect you from
All the things ive seen
And I'll clean your wounds
Rinse them with saline


Adolescent fiance
I'm just flesh to give away


今にも消え入りそうな可憐な声で歌詞がコレなんだから、これはもうゴスだと認めざるを得ない。俺の大好きなゴスとは豪華絢爛なファンタジー世界ではなくて、愛と憎、光と影、生と死が交錯する人間の最も深い部分を抉り取るような音世界を指すのです。濃密かつ洗練されたサウンドとともに、より強く内省を迫るストレンジな迫力を感じさせる作品です。


2年半ぶりとなる3作目。


Rating; 8.4/10