FUJI ROCK FESTIVAL '12 1日目


雨が降らない…だと…?


今回でフジロック行くの6回目になるんですが、初めて全く雨が降らないという奇跡が起こりました。雨降りっぱなしだった昨年とはまるっきり正反対の超快晴。逆にここまでカンカン照りだとちょっとくらい降ってくれても良いんですよ?と思わなくもなかったですが、まー今年のフジは過ごしやすかったです。ソールドアウトしてるだけあって人は超多かったし携帯の電波もろくすっぽ入らなかったですけどね。結局辛い。あと今年は初めて朝貝エリアに宿が取れたということで (掘っ立て小屋に毛が生えたような宿でしたけど) 深夜までダラダラと会場に居れたという初の出来事もあったり。以下ライブの感想。


mouse on the keys @ ORANGE COURT
初っ端は The Trojans とか見ようかなと思ってたんですが、Tシャツ買うために物販で炎天下の中2時間半並んでたら終わってたという。何やってんの俺?それはともかくマウスさん。前回 KAIKOO FES で見た時と大きくは印象変わりませんが、安定して良かったです。ピアノとドラムの迫力あるダイナミズムが相乗効果で高められてる感じで、そこにゲストのサックスやトランペットが狂騒っぷりに拍車を掛ける。ギターで envy のメンバーが参加した曲はポストロック要素が追加されたりと、元来のストイックさに多面的な魅力が加わっていて面白かったです。


チャットモンチー @ RED MARQUEE
レッドマーキーは超満員。実は昨年の対バンツアーを見に行ってたんですが、その時からさらに経験を積んで2人組としてのスタイルを強固なものにした感があります。えっちゃんがギターとサンプラーを駆使し、あっこがドラムを叩きつつシンセを弾く。それ以外にもえっちゃんはピアノ弾き語りを披露したり、逆にあっこがギターを弾いてえっちゃんがドラムを叩くといった具合に、柔軟かつ大胆に曲によってパートをシフトする。 「2人だけでどこまでやれるか」 を追求する真摯さと奔放さが聴き手にも十分に伝わってくるライブでした。ベースレスでもフレッシュな勢いがあってペラさは気にならないし、何より制約を逆手に取ったりデュオの限界に挑戦しようとする、その姿勢が非常に伸び伸びしてるんですよね。今の状況を楽しんでる無邪気な様子が分かる。これから先にも期待を抱かせる内容でした。


THE VERY BEST @ WHITE STAGE
Moritz Von Oswalt Trio とどちらにしようか悩みましたが、その時の気分でより単純にアガりそうなこちらへ。 Pitchfork など海外メディアで名前をよく目にする黒人ラッパー×白人トラックメイカーの2人組。この日はさらにラッパーが1人とギタリストを加えた4人編成でした。ラッパーがマラウィ出身ということである意味フジロックらしいアフリカン・アフロビートなのかと思いきや、単純明快な4つ打ちやレゲエの弛緩したグルーヴなどを交えた、むしろ Diplo あたりを彷彿とさせる大味でコシの強いエレクトロサウンドでした。クラブミュージックの良い意味で軽薄なガラの悪さと、南半球的な陽気さや人懐っこさがブレンドされた敷居の低いダンスミュージックで、一見さんでももれなく盛り上がれるフェスにおいての強さを発揮していました。分かりやすさは正義。


LOS LONELY BOYS @ FIELD OF HEAVEN
この辺から徐々に陽が暮れ始める。テキサス出身の3人組であります。後ろの方で座ってメシ食いながら見てたんですが、思わず立ち上がってしまうくらいの格好良さ。言わばオーソドックスなアメリカンロックなんですが、とにかく演奏が美味。各メンバーの確かな演奏力によるグルーヴのタフさ、ジャムセッション的な長尺ギターソロの華やかさ、そしてカラッとしながらも何処か憂いのあるメロディ/ハーモニーの豊かさ。それらが一丸となって生まれる楽曲のコクや渋味は実に味わい深いものでした。ブルージーなロックンロールの王道を追求し、血肉に消化したフィジカルな躍動感がとても心地良く、楽器全てに歌心があると言えるアンサンブルは人を選ばない求心力があると思いました。70分があっという間に感じる充実のアクトでしたね。


JAMES BLAKE @ WHITE STAGE
昨年の来日公演は行けなかったので今回は確実に押さえました。ロンドン出身のシンガーソングライター。ライブではキーボードとヴォーカルを務める本人以外に、サンプル&ドラムとギターの3人編成。1曲目 「Unluck」 が始まった瞬間、会場の空気が引き締まるような感覚を覚えました。 James の憂いや悲しみを孕んだ儚い歌声が、変則的なビートと皮膚まで空気の振動を伝えるベース音の異様な音圧によって、底の見えない闇を広げるような果てしない深みを持って響いてきました。ピアノと歌のみによる収斂から、ギター/ベース/シンセが折り重なって冷たい轟音に移り変わる発散。不意に牧歌的な暖かみを見せる 「Lindisfarne」 、スリリングな加速度で圧倒した 「CMYK」 、やはり低音が凄まじいことになってた 「Limit to Your Love」 など、実験精神と普遍的な歌の魅力が高いレベルで合致した楽曲群は、ライブならではの爆音を身につけてよりエモーショナルかつクールに説得力を増していました。機材をフル活用して様々な音を鳴らしながらもステージのセットは実にシンプルなもので、そのスタイリッシュな編成もクールという印象に拍車を掛けてたかもしれません。本編最後の名曲 「The Wilhelm Scream」 に至るまで緊張感をまるで切らさない、トリに相応しい圧巻のステージでした。これでまだデビューしたての23歳というんだから末恐ろしい。


以上で1日目は終了。2日目に続きます。