Marissa Nadler 「The Sister」

Sister

Sister


梅雨の湿気を一層強くするアルバムが届きました。


内容は一貫して、いつものアコースティックギター弾き語り。ただいつものとは言ってもオープナー 「The Wrecking Ball Company」 の奇妙なアルペジオの響きを聴けば、やはり彼女の中で何かが歪んでしまっていることが分かると思います。ヴォーカルの深くナチュラルなリバーブ処理、またコーラスやシンセなどの必要最低限で効果的な使い方も加わり、陽の届かない場所から全てを描写してるような彼女ならではの世界観を展開するホーンテッド・フォークです。虚飾だらけで形骸化したゴシックよりも、俺にとってはこっちの方がよっぽどゴス的だと思います (Goth is attitude!) 。


彼女の穏やかな歌声は優しい曲調であっても真綿で首を絞めるような狂気を裏側に孕んでるようだし、悲しげなトーンは冷たいナイフとなって皮膚をなぞるようにして傷をつけていく。しかしながら8曲33分と随分コンパクトな作りになっているため、中身の濃厚さに反して案外サラッと聴けてしまうかもしれません。彼女自身のレーベルを作ったことで制作におけるフットワークが軽くなってるのかもしれませんね。怨念はある程度溜めて溜めて熟成発酵させてから出した方が美味い気もしますが。


関係ないけど、ひょっとしたらこの人、3作目出したあたりで死んでたら Nick Drake みたいに伝説になってたのかなあ、とか。


ワシントン出身のシンガーソングライターによる、1年ぶり6作目。


Rating: 7.7/10