DIIV 「Oshin」

Oshin

Oshin


まったくパッとしないやつだなー。


このバンド以前は Dive と名乗っていたはずですが、それだと他にもいるからっていうんで改名したんでしょうかね。シューゲイザーで dive だと日本にもいたし。そう、彼らも新世代のシューゲイザーシーンへと身を乗り出す若手ホープです。音の輪郭を淡く滲ませる80年代直系のリバーブ感、ホワイトノイズではなくクリーントーンの深い陶酔感と美しさを主としており、特に極端なリバーブ処理がかけられたヴォーカルは空気の中へ蒸発してしまうくらいにアブストラクト。このミステリアスでありつつ牧歌的なハピネスの感じられるサイケデリアは Animal Colective 的だなと思わなくもないし、 The Cure あたりのネオサイケな感覚も多分に混じってると思う。様々な世代のサイケ感のエッセンスを自己流で咀嚼し、ベッドルームから一切出ずにスクリーンの中だけで夢を見るような内省ドリームポップワールドが展開されています。


では普通のサイケデリックシューゲイザーの境界線は何処か?それはやはり青春してるかしてないかだと思います。歌詞の内容は聴き取れませんが、単純にコードやメロディの質感から受ける印象は、遠い日の木洩れ日を思い起こさせるノスタルジックな切なさ、甘酸っぱさ、鮮やかさ。全てが夢のように過ぎ去ってしまう遣る瀬無さ。そういった感傷の捌け口としてこの音は鳴らされてるのだと俺は勝手に解釈します。 「Past Lives」 「How Long Have You Known?」 など程良くスピード感のついた曲は尚更。もう曲作りから音作りの細部に至るまで方向性が定まり切ってしまってるもんで、もう傷つきたくないから外出ないと決め込んだ引きこもりの夢とか憂鬱とか希望とかが13曲約40分に渡ってぶわっと。もうちょっと社会生きろよ。


ま、聴いてて人としてダメになりそうになるってのも、ある意味シューゲイザーの必須事項なのかもしれませんね。


ニューヨーク出身、 Zachary Cole Smith を中心とする4人組のデビュー作。


Rating: 7.5/10