Exlovers 「Moth」

モス

モス


さあみんな!シューゲイザーの季節だよ!


昨年のちょうど今頃は Ringo Deathstarr を愛聴していましたが、今年はこのバンドになりそう。ノイジーなギターサウンドよりも軽やかな抜けの良さが前に出てるあたり、 Ringo Deathstarr よりむしろ The Pains of Being Pure at Heart に近いか。何はともあれアーリー90年代の揺らめく幻影を追い求めるネオアコ/シューゲイザーリバイバルの新鋭でございます。ジャケットは少々ゴスい感じですが、中身は麗らかな木洩れ日が目の前の情景を潤ませるように、開放感と甘酸っぱい切なさが詰め込まれたキラメキ・ポップのオンパレード。もはや90年代という時代がタイムリーパーによって塗り替えられない限り、このノスタルジックな感傷は一定の世代から惜しみない賛辞を贈られるだろうし、その時代をリアルタイムでは経験していない俺にとっても、古き良き青春ロードムービーを観るような趣でフレッシュな魅力として映ります。


清冽とした疾走感が春風のように過ぎていく 「Starlight, Starlight」 、空間を徐々にサイケデリックな色彩で埋め尽くしていく 「Unloveable」 、フォーキーな哀愁がまた良い味を醸し出す 「You Forget So Easily」 、その他本編10曲にボートラも多数。それらいずれの楽曲もが潔いくらいにシューゲイザーマナーを踏襲しており、そこには若さ故の過ちにも似た愛情が滲み出ています。曲名だって深く立ち込める青草の香りのように若々しいし、コンサバ系の可愛い女の子もメンバーに擁してるあたりパーフェクト。やりたいことのビジョンが明確なのは多分良いこと。シューゲイザーとしての新境地を示してほしいとする御仁には否定的な路線かもしれませんが、だって我々は過ぎ去った想い出を振り返る心地良さと遣る瀬無さに全力を注いでいるのだし、前なんて向いてられねえよ、なあ?


2年ほど前から活動してるというので手元にあるシューゲイザー・ディスクガイドをめくってみたけれど、このバンドは載っていなかった。シューゲイザーはまだまだ死んだジャンルではなく、若手によって現在進行形で更新されているということです。それはもう、内気だけど表現欲求を持て余してるジュブナイルが世界から消えない限り残り続けるんじゃないですかね。


ロンドン出身の5人組によるデビュー作。


Rating: 8.1/10